「鬼めが、蛇を収めろ。」


 桃太郎は息を整える。


 確かに勝った。


 勝ったとはいえ、このような勝負。


 おそらく、あと10回やったら自分は10回負けてしまうだろう。


「・・・・・・・・・・。」


 それでも、オロチは負けを認めたのか、おとなしく剣を鞘にしまう。


 蛇もシュルシュルと音をたて、林の中に戻っていく。


「父が言っていた。オロチを共に連れいてく・・・その選択が出来なかった。全て自分の責任だと。」


 桃太郎も剣を納める。


 蛇が立ち去り、金太郎、孫悟空、乙姫もお互いに武器を下ろした。


 ・・・・武士の情けだ。乙姫の顔だけは見ずにいてやろう。


「・・・そうか。」


 オロチは、後ろの三人を見る。


「だからこその、お供か・・・。一人で来ぬとは、情けないと思っていたが、共に連れて行く・・・それがアヤツの答えか。」


「父もじきにそなたのところに向かおう。そのときまで待たれよ。鬼、ヤマタノオロチよ。そこで、ゆっくりと話せばよい。」


「・・・良い息子を持ったものだ。」


 オロチは大きく肩を揺らすと、蛇が消えていった方に身体を向ける。