「・・・・何ゆえに?」


 しかし、オロチは目線を川からそらそうとしない。


 その両手に持った釣竿も離そうとしない。


「何ゆえ?・・・そなたが、鬼だからだ!」


 他に理由があるというのだろうか?


「その剣・・・そうか、お前がアイツの倅か・・・アイツの倅が俺のことを鬼として退治してきたのか・・・。」


 男は一瞬だけ桃太郎に目線を配らすと、再び川に戻した。


 こちらのことは、対して気にも留めてない様子だ。


 ・・・・・・。


「オロチ殿。そなたの偉業、偉大さ、有能さは父より聞き及んでおります。しかし、そなたは今や鬼。どうか剣を抜き成され。丸腰の男を切ることなど、私には出来ませぬ。」


「それが、甘いのだと・・・あいつにも教えたはずなのだがな・・・。」


 それは一瞬だった。


 男はあくまで川を見ていた。男の手はあくまで釣竿をつかんだままだった。


 だから、それは完全な不意打ち。


 桃太郎を前面に置いた四人に襲い掛かるは、八方から攻めてくる・・・蛇の頭。


「なっ!」


「ぐっ!」


「卑劣な。」


 それを防いだのは、金太郎の鉞。悟空の棒。乙姫の扇。


 一瞬にして、8本の首が切り落とされ、殴られ、煽られ、後退する。