「しかし、出雲の国は海ともそれほど離れているわけではなかろう・・・例え、作物が取れずとも、食には困らぬのではないか?」


 金太郎の質問。


 仮にも出雲王の方が、立場が上だというのにこの言葉遣いはない。


 わが主ながら、恥ずかしく思うぞ。


「では、逆に聞かせていただくが、貴殿は鬼が住む海に出ることが出来ようか?」


 王が金太郎を睨んだ気がした。


 作物が取れず、土地の食べ物には困り、頼みの綱の海も鬼に邪魔されか。


「鬼が島でございますか?嘆かわしい。」


 乙姫が大きく、ため息をつく。


「返す言葉もない。」


 だろうな。


 既に、他国に・・・しかも、いくら同盟国とはいえ、半月も離れている大和の国にも協力を求めるというコトは、それだけ出雲は追い込まれているというコトだろう。


 大方の話は浦島仙人に聞いた。


 出雲王には大和からの使者が来たことへの報告と、挨拶に参っただけだ。


 これ以上、話すこともあるまい。


 飢饉が起こった国で夕餉を用意してもらうのも失礼だ。


 適当に、寝る場所だけ用意してもらうことにしよう。


「・・・・・・・・承知した。明日には出るとしよう。宿を用意してくれ。」