「俺に対して卑しいヤツと呼ぶのも、お前ぐらいな者だ。金太郎。」


 イヌ吉がいやなら、幼名で呼んでやってもいいぞ。


 笑いながら、タケルは剣を腰につけてある鞘にしまう。


 一国の王子が持つには、あまりに質素な木材の鞘。


 それ以外にも、タケルの格好は麻で出来た着物に、無造作に伸びた髪の毛を後ろ一本で縛る『ちょんまげ』と呼ばれる髪型をしており、お世辞にも一国の長の息子には見えない。


「その名も腹が立つ。」


「負けたものが、偉そうに・・・」


「剣術だからだ。相撲では絶対に負けん!」


 だろうな。


 しかし・・・。


「お前は、剣を持った相手に、相撲を挑むのか?」


 それは、勇敢というよりは、無謀と呼ぶべき行為だと俺は思うが・・・。


「あぁいえば、こういう・・・誰に似たのだ?」


 知るか。


 大方、父上だろうよ。