漁村のはしの端。


 海の岬でその老人は、亀を手元に釣り糸をたらし、海を眺めていた。


 見た目だけならば、どこにでもいる、一介の漁師だった。


 白髪の伸ばしきった髪の毛を後ろに結び、髭もだらりと伸ばし、麻の布を巻いただけの簡素な服を着て、亀を横に、ノンビリと釣りをしているだけの、見るからにみすぼらしい、老人。


 仙人と呼ばれているから、どれだけの男かと思っていたが、コレでは知らぬものが見たら、ただの老いぼれジジイにしか見えないだろう。


「お忙しいところ、失礼します。浦島太郎様とお見受けしておりますが、違いますか?」


 輝夜姫のときとは違い、タケルはその老人に近づくや否や、ひざをつき、頭を垂れた。


「・・・・・・・」


 それに対して、その老人は、タケルに一瞬だけ目配せをすると、すぐに海辺に視線を戻した。


「・・・・・・・・・・・スサノオウの倅か・・・。」


「!」


 その言葉だけで、タケルは目の前の男の凄さを痛感した。


 タケルは、この男と会うのは始めてである。


 ましてや、自分の格好は、恥ずかしながらこの三人の中でも特に、特の高い格好をしているというわけではない。


 それでもすぐに見破るとは・・・。