「そうは、参りません。出雲の国といえば、この京の国とも大事な貿易相手。それが、鬼の被害にあわれているというのに、それを無碍にするなど私ができるわけありません。」


 ニヨニヨと笑みを浮かべる悟空と呼ばれた男。


「しかし・・・!」


 それに対して、あからさまに同様をしている輝夜姫は実に対照的だ。


「それに、せっかくこの国まで来ていただいた客人に対して、手ぶらで帰ってもらうというのも、酷な話。どうでしょう?輝夜姫、兵は与えぬ代わりに、この者たちに私がついていくというのは?」


「なっ・・・!」


 ほぉ。お前がな・・・。しかし、悟空・・・悟空・・・どこかで聞いたような・・・・・・


 ・・・・・・・・・まさか・・・・な・・・。


「いや、しかしお主は唐からの貴重な客人であり・・・。」


「輝夜姫、一つ聞きたいのだが・・・もしや、その男・・・。」


 思わず、指差してしまう。


 もし、自分の予想通りの男だとしたら、決してそんなコトをしてはならない相手だが・・・。


「コレは、失礼しました。私、唐の使者。『孫悟空』と申します。」


 深々と頭を下げる孫悟空。


「なっ!」


 その名前を聞いて、初めてタケルは汗をかいたのを感じた。


 すぐに胡坐をとき、肩ひざをつき、頭を垂れた。