先程の足音の持ち主が分からぬまま、彼女らは進むしか他無い。


"霊"


愛華の脳内にその文字が浮かぶ。


さっきの話で人間じゃないとすれば、信じたくはないが自然とその考えに行き着いてしまう。


犬や猫が走り去ったと言うのは考えられない、確実に二足歩行の音だった。


それに、エレベーター前での出来事。


思い出すと鳥肌がたつ。


確かにこの眼で視たのだ。


ますます霊が居るのでないかという確信が深まる。


愛華だけではなく、紗絵子も同じであった。


自分の足にはまだ違和感が残る。


それは丁度掴まれた辺り。


思わず足にぐっと力を入れた。