足音は一分も経たない内に聞こえなくなった。


愛華は不安をぬぐい去りたくて小声で紗絵子に問い掛ける。


「今のは徹先生…ですよね」


「だとしたら、どうしてライトが見えなかったのかしら」


恐る恐る口を開いた紗絵子はそのまま続ける。


「この暗い中、ライトも点けずにあんな風には走れないわ」


確かにそうだった。


結構な至近距離で聴こえた筈なのに。


「じゃぁ…」


「例え私達の他に誰かが迷い込んだとしても、見知らぬ場所を明かりもなしに走れる?」


紗絵子の言葉は、愛華の不安を無くす事は出来ず恐怖心さえも一層させた。