目の前まで来るとその護符を誠に差し出す。



「はい。これは絶対大切に取っておいて。」


「あ、ああ。」



言われるままそれを受け取る。


女の子はまた笑ってみせた。



「お父さんとお母さんを大切にしてね。私の分も頑張って生きて。」



すると女の子の体が徐々に透け始めた。



「まっ、待って!」



誠は慌てて制止をかける。



「ありがとう、──姉さん…。」


「バイバイ、誠!」



最後に大きく手を振り、小学生らしい姿を見せて女の子は消えた。








あれからすっかり体調がよくなった誠。


どうやら体の不調は悪霊のせいだったようだ。


そして──



「あっ、俺が墓石拭くよ。」


「そうか?いつもは面倒くさそうに今日は積極的だな。」



姉の命日である今日、誠は帰ってきた父と美代子と共に墓参りにきた。


前回まではただ事務的に行っていた作業も、今日は心から感謝の意を持って行う。


一通りの作業を終えると線香を供えて手を合わした。



(今までごめん。ありがとう。)








-漆 尾行秘話-終わり