「どうして私が救世主であなたが魔王なの?どうしてあなたは私に倒されるの?どうして私があなたを倒すの?」



彼は
シニカルに笑ってみせた。


「どうして?そんなの簡単な事だよ、いつも言ってるだろう?君を愛してるからだよ」


彼は、時々よく分からない事を言う。
私を好きだというけど私の好きなものは嫌いだという。





「私だってあなたが好きですよう」


だからあなたが倒されるのは嫌、倒すのが私なんて嫌よ。



「僕の方が好きだよ」

僕と君の“好き”は違うんだよって彼が苦笑する。


「どこが違うの」

一緒じゃないか。
あなたは私が好きで、
私もあなたが好き。

両想いじゃないか。



「重さが違うんだよ」


重いのは嫌だなぁ。




「なら尚更どうして敵同士なんですかぁ」

「魔王ってなれあわくて済むし、たいてい救世主に片思いして自滅するもんだからだよ」


彼らしい答えだけど、
彼らしくない答えだった。

だから片思いじゃないのになぁ。







桜の花びらは
こんなにも綺麗なのに、
彼ときたら私しか見てくれない。

私ときたら
彼を見ずに
桜の花びらばかり見て考え込んだ。






 ―…愛とはなんだろうか。