薫は作り笑いを浮かべた。
顔は格好良い。
きっと人気があるだろう。
「…依奈に何かしたら、殴るからね。」
「おおきに。」
しょうがない。依奈のためだ。
本当に嫌なら断れたが、実際、ほんの少しだけ恵美は薫に惹かれていた。
彼は、自分の事をどうとも思ってないだろう。
それだけははっきりと分かる。
ズキン、
なぜか心臓が締め付けられた。
「恵美ちゃん、放課後…教室にいてや。」
「え?」
「向かえにいくで。」
じゃあ、とその場を離れていく薫。
何を考えているのか全くわからない。
とりあえず恵美は教室に戻った。
授業真っ最中の中、教師に許可をもらい入室する。
心配そうに依奈がこちらを見ているのが分かった。
口パクで、 大丈夫よ と言えばほっとしたように笑う。
後ろで、悠真が鼻で笑った。
授業が終わると、恵美は依奈の元へと行く。
「…私、橘薫と付き合う事になっちゃった。」
「ええ!?」
なんで急に!?
「…ブス、お前は俺と付き合ってんだろ。」
面白がるような発言に依奈は顔を真っ赤にして否定する。
「ち、違うよ!!」
