その後あたしは静かにユリの話を聞いた。

幼少期、性別保留としながらも男として育てられたこと。

二次成長期の体つき、外見、見た目のままの性別を受け入れることにしたこと。

それでもいまだに心は戸惑っていること。


あたしは腑に落ちないことを聞いてみた。


「……あっちゃんとユリがホテルに入るの見たんだけど……あれは何?」


「あれ、ちゃんと見てたんだ……。敦くんミリが男に無理矢理ホテルに連れ込まれたって言ったらついて来たよ。ミリが勘違いして敦くんと別れればいいって思って……」



なんじゃそら!

あっちゃん何も悪くないんじゃん!
むしろいい奴じゃん!


「……ごめんねミリ」

ユリはゆっくり瞼をとじてあたしをまっすぐに見た。


「ごめんね……僕はミリが好きだよ」



その瞬間、頭が真っ白になりあたしは何も言えないでただユリを見ていた。

あたしの目に映るユリの姿はどう見ても女の子だった。


「……帰るね」


ユリは荷物をまとめると足早に部屋から出て行った。


――何なんだよ。

何が起きてるんだよ。


あたしの頭のキャパシティー、容量こえて整理しきれない。


「……大丈夫?」


ひなたがあたしの肩を抱いて顔を覗き込む。

――痛い。

胸に重たい鉛のトゲが刺さったみたいに痛い。