「翼先生と桃子ちゃんが同じ部屋…… やばいっすね」


「えっ!!何がですか!!何もやばくないですよ!!」



きっと直と桃子ちゃんはその話で盛り上がっているだろう。


時々聞こえる直の笑い声がとても嬉しそうだった。




「翼先生、それ……計画的でしょ?」


俺がいじわるを言うと翼先生は顔を真っ赤にした。



「それは絶対に違います!!でも、違うホテルにしようとは考えなかった。やっぱり俺は……」



ため息をついてバスの天井を見上げた翼先生。



「ちょっとうらやましいです。その感じ、懐かしい。今思い出すと泣けるくらいに懐かしいです。俺もずっと気持ちが言えないでいたから」



授業中、目が合うと元気になれた。


直が俺を見つめてくれていることに気付いてからは、俺はその視線にいつもドキドキさせられた。


灰色だった俺の心を色づかせてくれたのは、直だった。



好きだよって言いたかった。


言ったら、直はどんな顔をするだろうって何度も想像した。





喜ぶかな?

それとも、少し困った顔をするかな。





俺は、直に好きだと言えないあの時間、どんどん直を好きになっていたんだ。