私は桃子と腕を絡ませ、鼻歌まじりにバスに乗り込んだ。


このバスは、力さんの牧場へと向かう。




「矢沢さん、旦那さん借りちゃっていい?」




翼先生は、授業では見せたことのないお茶目な顔をしてそう言った。



「はい!!どうぞ!!」




私は桃子とふたりで一番後ろの席に座った。



3列前に座った先生と翼先生の後ろ姿を見つめる。





「桃子もマニアだね」


「直には負けるって」





桃子は、私の耳元に顔を近づけた。



「あのね、今夜のホテル。ツインなんだけど、同じ部屋なの。どうしよう」



「え~!!まじ?」



先生でもそんな大胆なことしないよぉ。


翼先生、なかなかやる~!!



「うん。空いてなくて、1室しか取れなかったんだって。でも、翼先生が予約したんだから、翼先生もそれでいいってことなんだよね?」



桃子の瞳はキラキラしていた。



片想いが両想いに変わる時、人はすごく輝くんだなと思った。


桃子はとても綺麗で、幸せに満ちあふれているように見えた。




「翼先生も、桃子と一緒にいたいんだよ。大丈夫!!桃子と同じ気持ちだと思うよ」