「本当はゆかりの胸で泣きたかった」




「直……」





私はゆかりの口にドーナツを運ぶ。



ゆかりはびっくりした顔でドーナツをほおばって、私の口にもドーナツを近づけた。




「私がたっくんと離れている間、直はいつも私のこと気にしてくれててさ。先生とのラブラブ話もあんまりしなくて、それが直の優しさだなって思った。いろいろ心配かけてごめんね」



「こっちのセリフだよぉ。ゆかりはいつも私が辛い時、自分のことのように一緒に悩んでくれて、助けてくれた。ありがと」



ストローに顔を近づけて、チューっとミルクティーを吸う。


ゆかりも真似して、同じように吸う。




私にとって、ゆかりはこの世界の中でたったひとりのかけがえのない存在。



ゆかりがいない人生なんて考えられないくらい。



「先生が見たら嫉妬するよね」



ゆかりはそう言って、私の頭を撫でた。





「もう本当に大丈夫?私には本音を言ってよ?」




ゆかりは、私の顔をのぞき込むようにして、上目遣いで私を見る。




本音……

自分でもよくわからない。




本当の心の中は、まだ美穂のことを許していないのかもしれないし、もう許しているような気もする。