私達は夕食を食べ終え、ホテルへと戻る。





タクシーに乗った私は、翼先生の腕を掴んだ。




「翼先生!直が心配なんだけど」



翼先生は携帯を取り出して、優しく微笑んだ。


「新垣先生も、かなり心配そうだったよ。ちょっと、連絡してみるよ」



翼先生は、さっき聞いたばかりだという新垣先生の携帯に電話をかけようとしてくれた。


今まで、授業をしている翼先生ばかり見ていたから、こうして旅行に来てみると新しい発見ばかりなんだ。



こんな風に、恋愛に関する不安とか心配とか…… しっかりわかってくれる人だったなんて知らなかった。




予想もしない事件が起こった。



美穂とタカがケンカをして、その原因が…… 美穂が直の旦那さんである先生に対して変な感情を抱いちゃったような感じで。




とにかく直が心配。





「大丈夫かな、直」



「すぐかけるから。安心して」



翼先生は、新垣先生に電話をかけ、私の気持ちを伝えてくれた。


直には内緒ってことで、直が元気がなかったからよろしくって。




「桃ちゃんは優しいな」


「翼先生こそ……」



タクシーの運転手さんが、行き先を尋ねたので、その先は口をつぐんだ。