ねぇ?竜馬くん?
少しくらい…あたしの期待、裏切ってくれないかなぁ…
「雫?音無くんに見とれてんの?」
「そんなんじゃないよ」
体育館から運動場を見つめながら呟く。
今は体育の授業中。
あたしたち女子は体育館でバレーボール。
男子は運動場でバスケ。
そしてあたしの視線の先にはちょうど、シュートを放った竜馬くんがいる。
「あーあ…またゴール決めてる」
梢がポツリと呟く。
「運動神経も…いいんだよねぇ…」
「どうやったらあんな人が生まれてくるんだろうね」
もうね、竜馬くんは完璧人間だってことが転入して10日で判明したの。
まず、ご存じの通りルックス。
完璧とかそういう問題じゃなくなってるよね。
で、運動神経。
もう抜群なワケだよ。
竜馬くんはサッカー部に入部したんだけど、誰も太刀打ちできない状態。
そして頭。
ビックリだよ。
帰国子女だけあって英語は完璧だし、
他の教科だってスラスラ解いちゃうの。
あ、それと肝心の性格ね。
ホント、紳士的で、優しいの。
レディーファーストは当たり前だし、
男女問わずみんなに平等に接してて。
容姿端麗
運動神経抜群
成績優秀
ほらね?どっからどう見ても完璧でしょ?
でもね?あたし、知ってるんだ。
……竜馬くんの弱点。
と、いうか苦手なこと。


