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そして今に至る。




「柏木、お前、"壱"なんだな?」


「保科壱は、俺が昔捨てた名前だ」


「捨てた?」


「今は柏木壱だ。保科は昔の名前」


「今さら俺らの前に姿を見せて、何かの冗談?」


「いや、ただこの街が恋しくなったから」



柏木は空を見上げて言った。



「はぁ?ふざけんじゃねーよ。お前、凛の気持ち知ってて来たんだろ?」


「・・・・・・・凛」




何だ?

一瞬、昔のアイツの空気に戻った気が。




「安心して塁、俺は凛に、正体を証す気はないから」


「じゃ何の為に来たんだ」


「自分の為…かな。じゃーな"綾瀬"」


「おい待て!壱!」




なんなんだアイツ。

昔の名前を捨てた?


戻って来たのは自分の為?



何考えてんだ。




凛の気持ち知ってて、凛の目の前に堂々と現れやがって。



俺達を裏切っておいて。