「お母さん、いつから壱の事知ってたの?私、話してないよね?」
「そ~ね…たぶん、壱君のお母さんを見かけた次の日くらいかしら。あれはやっぱり壱君のお母さんだったのよね」
「壱のお母さんって…あの、私が風邪をひいた日?」
「そう。お隣さんがね、最近、この家を良く眺めてる男の子がいるって話しを聞いたの」
「それって…」
「そう、壱君の事。最近お母さんね、その壱君に会ったの」
「え!?」
「ちょうどお母さんが買い物から帰ってきた時に、本当に寂しげな表情でこの家を見てたの」
壱がわたしの家を……。
「壱と、話したの?」
「ううん。お辞儀して、行っちゃったの」
「何で言ってくれないの!?」
「お母さんが話したところでどうするのよ。これはあなた達の問題よ?お母さんは入る隙がないわ」
「だけど……」
「だけど、あの様子だと壱君…」
お母さんがそこで話を止めた。
「何?」
「いや、何でもないわ!さ、朝ごはん朝ごはん!」
「何よ!気になるじゃん!」
「まぁ…一つだけ言っておくわ。凛、大切なものって、案外近くにあるかもね。それで、絶対に逃すともう…幸せにはなれないから、その時は自分の気持ちに素直に動くことね」
お母さんのその言葉は、なぜか響いた。
忘れちゃいけない言葉のような気がした。



