-壱 side-
<<藤堂寺家>>
「珍しいわね、壱から「逢いたい」って言ってくるなんて」
「ちょっと、話したい事があって」
「…そう…」
俺は今、若菜の家に来ている。
若菜には、きちんと話しておきたいからだ。
明日、凛に全てを話すことを。
「何?話したい事って」
若菜は、ティーカップに紅茶を注ぎながら俺に聞いてきた。
「凛……の事なんだけど」
紅茶を入れる手が、ピタっと止む。
「明日、全部話そうと思う」
「全部?」
一瞬止まった手が、何事もなかったかのように、また動き出す。
しかし、態度や声に、落ち着きはない。
「俺が若菜と婚約する理由や、親父の事、母さんの事……ぜん」
"バンッ!"
「それで壱は、私から離れていくの?あの方を選ぶの?私の事すてて、南沢さんのところへ行くの?」
「若菜…」
「私…壱が好きなの…」
目にいっぱいの涙を溜めて、俺に訴えかける若菜。
「凛に気持ちを話すつもりはない。ただ、今までの俺の事を話したいだけなんだ。わかってくれ。俺はアイツに心配かけすぎたし、アイツをたくさん傷つけた。せめてもの、償いに」
「私、あの方の事を考えている壱は見たくない!」
「おい!若菜!」
若菜は部屋を飛び出した。
「ハァ…やっぱ無駄か…」



