その後、藤堂寺さんは本当に父さんの借金を支払って、取立ても来なくなった。
入院費や生活費も、毎月入ってきた。
だけど俺は、母さんにバイトをしてると嘘をついて、全てを話さなかった。
だけど、それはすぐにバレる事になる。
それは、藤堂寺さんが俺に持ちかけた婚約の話。
藤堂寺さんと出逢いから、3ヵ月が経ったある日。
「あの、藤堂寺さん。逢わせたい方って?」
藤堂寺さんに呼ばれ行ってみれば、藤堂寺さんの横には、真っ白な制服を身に付けた女の子が座っていた。
「私の娘の、若菜だ」
「初めまして、壱君」
「初めまして」
目を真ん丸くして、俺を見つめてくる。
「実は、若菜が君の事を気に入ってね」
「俺を?」
「ええ!私、壱君のお嫁さんになりたいわ」
「お嫁さん……って」
「頼む壱君!若菜の婚約者になってくれないか?」
藤堂寺さんが必死にお願いをしている。
俺にはすでに、断る事が出来ないくらい、藤堂寺さんの世話になっていた。
まさか初めから?と疑いもしたが、俺は凛を裏切った時点で、俺の人生はこう決まっていたのかもしれない。
俺は迷いもなく、
「わかりました」
と、応えた。



