「キンアカ」って知っていますか?

多分、デジタル世代の一億総クリエイターの現代人は誰でも知っていると思うけど。
赤色をCMYK4色の掛け合わせてつくるときのC0、M100、Y100、K0の印刷用語です。

僕は、7年前とあるデザイン会社に初就職したのですが、この言葉を知って戸惑いました。

どんなことかというと、デザイナーやクリエイティブ・ディレクターなどが「キンアカでしよう」とか「ここをキンアカに修正して」だとか頻繁に「キンアカ」という言葉を使うのです。

当時、入社したての僕は、クライアントさんに「キンアカ」となんですか?と正直に聞いたら、「お前、そんなことも知らないのか?」とえらく起られて担当として「デキン」をくらいました。
その「デキン」もはじめての言葉で意味も分からなかったのですが、後日、先輩に「デキンって何ですか?」と聞くと、「出入り禁止のことだよ」とあきれ果てていました。

僕が今回、このマイノリティ・レポートに書くのは、「キンアカ」についてです。

就職するまで僕はクリエイター志望で油絵を描いていました。
油絵というのは、パレットでも、キャンパスでも、筆先でも巧妙に色彩を構成して描くものです。
ですから、色彩表現にはえらく気を払い、色彩と色彩がキャンパスに残す軌跡(形状)を真剣に考えるのですが、僕が就職して、そんな色彩が「キンアカ」というC0、M100、Y100、K0の言葉で簡略化されて伝えられている社会に驚いたのです。

僕は社会ってなんてシンプルな世界だろうと思い、色彩が記号化されて共有されているC0、M100、Y100、K0の「キンアカ」はなんて便利で魔法のような言葉だろうと思いました。