「息子に会いに来てはいけないのか?」
「会長がお出でになる時は、何か話がある時ではありませんか?」
「話か…まぁ、無い訳ではないが」


話?


「すまん、綾美。先に部屋へ行ってくれないか?」

言いながら主任が、私にタコ焼きの袋を差し出してきた。


「話を済ませてから戻る」
私は無言で袋を受け取った。


何も言えない。

聞いたりしちゃいけない雰囲気だ。


入っちゃいけない領域。


私を、関わらせたくない様に見える主任。



主任は、マンション入口の前の私を振り向かないまま、会長車であるリムジンに乗り込んで行った。


走り出して行く車……。


主任……。
どうしたの?


タコ焼きの袋を持つ手に力が入る。



何か…主任が遠く感じるよ。


嫌な予感も。


突然来た会長、いつもと違う主任。

うまく言葉にできない…すごく嫌な予感………。


主任…私……すごく心配だよ?




漠然とした不安を抱えながら、私は主任が乗った車を見送るしか無かった。