主任の顔を覗き込む。

視線の先は…マンションの正面入口。


あれ?

入口に誰か立ってる。
年配の…50代くらいの男性。


主任と私に気付いたその人は、ゆっくりと身体を向けた。

それを見つめる主任の背中が、強張ってる?


主任の前へと歩み寄って来た男性は、身長が高かった。
歳の割には背筋も伸びていて…。
仕立ての良さそうなブルーグレーのスーツに身を包み、白髪混じりの髪は品良くオールバックに整えられてる。

ダンディな人だなぁ。

顔も掘りが深くて、どことなくリチャード・ギアっぽい。


主任を見つめる男性は、やんわりと表情を崩し笑った。
「久しぶりだな、笙」

…主任の知り合い?

主任は眉を微かにひそめてる。
男性を見つめ返す主任…。
「………お久しぶりです、会長」

………会長?

「父さんと呼べと言っているだろう?」

会長と呼ばれた男性は、主任の肩を叩く。


会長…父さん………。

ちょっと待って…。


主任の父親って事は…このダンディは……東グループの……会長…。

会長だっ!!

私の雇い主!!大ボス!

何で!何でここに?!

…主任のお父さんなんだから来るか…。