丸腰デパート・イケメン保安課

あ〜ソレ、昔付き合ってた彼氏に貰ったぬいぐるみだ。
すっかり忘れてた。

「気に入った?」
「うん!」

千太郎くんは、ぬいぐるみを抱きしめて笑う。
かわいいなぁ。

「気に入ったならあげるよ」
「ホント?!」

千太郎くんは、やったぁ!と跳びはねて喜んでる。
マジかわいい。
人を詰める遊びさえしなければ…。

「二人共〜、引越し蕎麦ができたよ〜」

ノックをして顔を出した貢さんに返事をし、千太郎くんと手を繋いでリビングに向かった。

リビングでは、みんながすでに蕎麦を食べていた。

主任だけ鍋で食べてたけど…。

「荷物は片付きましたか?」
テーブルに着いた私に家紋さんが聞いてきた。

家紋さんは、家では着物を着るらしい。
今着てるのもグレーの絣着物。着流し風にラフに着てる。

かなり似合ってる。
さすが呉服店の息子だね。

「はい、今日中には終われそうです」
みんなのおかげでね。

主任が鍋を抱えながら隣に座ってきた。
「早く終わらせろよ、綾美。俺が手伝ってやろう」
「お断りします」

一生終われなくなるから。

「桜田さん、今夜はパーティーだからね」

貢さんが、主任の鍋に更に餅を入れながら笑った。