「昴がいたのか。どうりで走りのキレが良くないと感じるはずだ」
「主任!!言う事はそれだけ?!」

充分キレてたよ?!

「負けたよ、東……」

声に振り向くと、猿股さんが立っていた。
笑いながら主任の前へと歩み寄ってくる。

「俺の完敗だ」
「猿股」
「過去は忘れよう…元々、お前が悪い訳ではないしな」
「……ああ…俺は悪くない。お前が全て悪い」
…主任?!

あの、何て言うか…こういう流れで自分だけいい子ぶるのって…どうかと思うんだけど?
せめてこの場だけでも、俺も悪かったくらい言ってあげたら?

気にしていないのか、猿股さんは笑顔で主任に握手を求めた。
「いい勝負だった!何か色々、人間離れした貴様の異常さが出ていた」
褒めてるのか?けなしてるのか?
清々しくないなぁ。
「ああ!その通りだ」
認めたよ!
つーか、どっちもどっちだ。

がっちりと握手を交わす二人……めでたしめでたし?
いやでも、何かを忘れてる様な?

「だが、東…一つ言っておく」
猿股さんが主任の肩を叩いた。
何?まだ何かわだかまりあんの?

「勝負には負け、過去は忘れよう。だが…」
だが?

「綾美さんを諦めるつもりは無い事は明言しておく!」