思わず後ろの主任を振り返った。


「綾美にあげようと思って、ポケットに入れて隠しておいたんだぞ?」

笑う主任。


主任がくれた物は、松茸だった。
私にあげようって、取っておいてくれたのは、松茸だった。


何?主任のくせにこのサプライズ…嬉しいんだけど!

「…ありがとうございます」
ホントに嬉しい!
諦めてたから…。


「綾美、松茸楽しみにしてたからな」
「うん」
「御礼はいらないが、強いて頼みと言えば…この書類に署名捺印してくれたら俺も嬉しい」

そう言って主任が出してきたのは…。

「婚姻届けかよっ!!」

調子に乗るな!!


「ぶはっ!!」
私の裏拳を額に喰らった主任は、顔を両手で押さえつつもがいでる。

松茸で人生売る程軽くないよっ!私は!


でも…嬉しいよ、主任。

大事に松茸は味わいますからね。