丸腰デパート・イケメン保安課

「やまやまやまやま……―」
…何の呪文だ?

バロンは震えながら、その場に腰を抜かした様にへたりと座り込む。

「やま…山神様!!」
やまがみさま?

って何?

バロンの視線の先を辿ってみる。
ドラゴンボールを掲げて立つ主任と…その後ろには…猪…。

猪ッ?!!

フゥ――ッフゥ――ッ!

荒い息を吐きながら、主任の後方に潜む、巨大な猪―――!!!

「主任!!後ろ!!」
「何だ?」
私の声に、主任はゆっくりと振り向いた。

「………」
無言の主任。
巨大猪を確認…嬉しそうに笑ってる!!!

「ナイスシチュエーション!」
「どこがあぁっ―――!!」

ドラゴンボールで巨大猪を呼んじゃったじゃない!
何がシェイロンだ!
ナイスシチュエーションだあ!

「魚河岸さん!!」
何とかして!
「山神様ぁ〜!恐ろしいや〜!静まりたまえ〜!」
地面に平伏して拝んでる!

あんた!山に住む人間なら猪を追い払えよ!
服従してる場合か!

あ――――っ!もうっ!

「逃げて下さい!主任!!」
私達も逃げるっ!
「なぜだ!猪鍋が来たと言うのに!!」

鍋?!

「逃げてよ!!馬鹿っ!」
山神様!息も上がり、やる気満々なんだよ?!