「…自分で剥いて下さいよ」
いい歳の大人が。

「綾美が剥いてくれないと無理!」
断言かよっ!何に対しての無理だ!

「早く早く!」
待ち焦がれる様な瞳で、私の前に栗を転がしてくる主任。
あんた何歳なんだよ…。

でも…何かかわいいんだ。

「一個だけですよ?」
「やった!」
栗を剥く私の手元を、主任はじっと見つめてる。
おやつを待つ子供の様だ。
その光景に、家紋さんが小さく笑った。

「…駄々っ子」
「何だとっ!司!駄々っ子とは何だ!よりにもよって子を付けるとは!」
何に対して怒りたいんだ!
つーか、すでに駄々っ子じゃん。

「で主任、今年の社員旅行、何にするか決めたんすか?」
栗田さんが、栗を剥きながら話題を出してきた。

…社員旅行?

「ほふ!ふぁいひょほ…」
「主任、栗を飲み込んでから話して」
「ふ…ははっへ…ぶっ!ぼほっ!!ゲホッ!」
咳をしだした主任!むせたのか!

「主任!大丈夫?」
貢さんが、コーヒーの入ったカップを差し出した。瞬間…!

「っ!うわっ!」
主任の口から飛び出した栗が、貢さんを直撃しちゃったんだけどっ!

「ちょっ!主任!!」
顔から栗を浴びせられた貢さんは…半泣き!
当然だよ!