「みなさ〜ん!本日の茶菓子は焼き栗だよ〜」

貢さんが今日も、トレイにコーヒーと茶菓子を乗せて給湯室から出て来た。

栗かぁ…確かに秋って感じだね。
美味しそうな焼き栗を見ると、何か…ほんわかした気分。

「綾美、栗は松ボックリの進化した姿だと知っているか?」
「主任?!ソレ知ってる以前の問題だよ?!」
松に栗は実らないから!
そんなデタラメを誇らしげに語るなよ!

まったく…どんな頭してんの!
いいや、栗食べよう。

――バタァァン!!

菓子皿の栗に手を伸ばした瞬間、オフィス奥のドアが勢いよく開いた!

「今…栗と聞こえたが?」
昴さんが起床してきたぁっ!

「栗―…栗はどこに…」
まるで目の見えない少女が歩くかの様に、両手をかざして探り、栗を求める昴さん。
普通に求めろよ!またシーツ被ってるし!

「…栗だ」
栗を握りしめた昴さん。涙目だぁ!

「昴は、皮ごと食べるくらい栗好きだから」
編み物をしながら、家紋さんが呟いた。

皮ごとっ…どんだけ好物なんだよ!好物の限界は知らないけど。

「綾美ぃ、栗剥いて〜」
「は?」
いつの間にか主任が私の隣に屈み込み、デスクに顎を乗せていた。

甘えてるのか?