丸腰デパート・イケメン保安課

「どうぞ」
言い合う二人の前に、カップアイスが差し出された。

「食べて下さい、刑事さん」
「香奈ちゃん」

目の前には、香奈がアイスを差し出し立っていた。
「買い物に来たら刑事さんが見えたから…」

うつむき、小さく笑う香奈。
まだ顔のアザが痛々しい。

そうだ、まだ事件から五日しか経っていないのだ。


「…犯人、まだ見つからないんですか?」
笙と更科の間に座り、香奈は不安げに笙を見上げた。
「うん…でも待っててね!必ず捕まえるから!」
「怪我は平気か?」
アイスを頬張りながら聞いた更科に、香奈は瞳を伏せうなづいた。

「…学校、今休んでるんです…こんな顔…見られたくないし」

二人は、アイスを食べる手を止めた。

「夜、怖くて外に出られないです…両親も心配するから、あまり家から出ない様にしてます…思い出すと震えが止まらなくなるんです」
「そっか…」
「………」
「私んち、小さな部品工場を経営してるんですけど、お父さんなんか心配しすぎて工場の中に居ろなんて言うし」
香奈は力無く笑い、肩をすくめた。

被害者は、深く傷付く。
家族も、周りの人も…。
犯人を捕まえても傷は残る。

被害者に事件の終わりは無い。