世間知らずの文学少女だった母は、

大銀行の偉いさんの息子かなんかとのまとまりかけた縁談を破談にして、父とくっついたという話。


美青年と暗い生い立ち、というキャッチフレーズに乙女は弱い。


大抵は、くっついた後に後悔するのだけど。


「あんた達がいるから、私は幸せよ。結婚して、よかった」

そう言って微笑む母を見る度に、

ああ、生まれてこない方がよかったのか。

私がいなければ、二人は別れて母は幸せになれたのかもしれない、そうひねたことを考えて


父と、父似の自分を、嫌悪する日々。