そんな空気を打開するかのように、先に口を開いたのはアルヴィンだった。
「ロア…アランという男はどうだ?」
突然のアランという言葉に、ロアは僅かに反応する。
「セルマから聞いているよ。なかなかいい青年らしいな」
そう言いながら、アルヴィンはゆっくりとロアに歩み寄っていく。
とっさに椅子を立ったロアの肩に、アルヴィンがそっと手をのせた。
「ロア…ドレスを作ってもらってはくれないだろうか?」
「……」
俯くロアに、尚もアルヴィンは言葉を続けた。
「お前の晴れ姿が見たいんだ…」
ゆっくりと視線を上げるロアの目の前には、目を赤くして必死に涙を堪える父の姿があった。


