まだ湯気がたっているスープからは美味しそうなにおいがしている。
ロアはゆっくりと立ち上がりテーブルの前に腰を下ろすと胸の前で手を合わせると静かに目を閉じた。
「……いただきます」
ロアは最初ほとんど食べ物を口にしなかった。
自分の運命に自暴自棄になり、どうせ死ぬならと生きることに意味を感じなくなっていたのだ。
しかし、そんなロアを変えたのはセルマだった。
セルマは、毎日ロアのために食事を作るコック達がいる事、食材を作る民がいる事、そしてロアに生きてほしいと願う人間がいる事を泣きながらロアに訴えた。
それ以来、ロアはセルマが運んできた食事を少しずつだが口にするようになったのだ。


