一刻を争うことだった。

彼女と離れたくない。

彼女と別れたくない。

そんな言葉ばかりが頭の中を回る。

でも、

だけど、

それでも、

叶わないと、分かっていて。








なんだよ、なんだよこれ。

どうして彼女はツバメで、オレは白鳥なんだよ。

同じ時間を過ごせないだなんて、誰が決めた。

オレは不可能だって可能に変えてやる男で、
今だってきっと一緒にいる方法はあるはずなのに。



───なのに、どうしてオレは今南に向かっているんだろう。



行ったって、今度はそこでオレが生きられないだけだと分かっているのに。

それでも、彼女に生きていて欲しくて。

コスモスのような可愛い花が咲いた花畑が良く似合うだろうと思うと、
離れてたって幸せな場所に居て欲しくて。

視界で動く白い自分の体。

自慢の純白を、こんなにも恨めしいと思ったことはあっただろうか。



「───もしかして・・・」



ずっと黙っていた彼女が呟いた。

オレの向かっている場所に気付いてるようだった。

オレは何も答えなかったけれど、彼女は肯定と受け取ったらしい。



「何やってんの!!暖かいところ行ったら、今度は貴方が・・・ッ!!」

「だから、お前送ったら俺は戻るよ。家族だって居るし」

「!!」



その言葉は、オレと彼女の別れを意味していた。

彼女が息を呑んだのが分かる。

そして、空気が震えた。───彼女が、泣いているような気がした。

それは、ただの自意識過剰かもしれないけれど。

それでも、俺は努めて明るい声を出した。



「バカ、一生の別れになるわけじゃねぇだろ。死ぬんじゃないんだから」



紅葉が消えていく。

緑が目に入ってくる。



「ワシになんか渡しはしねぇよ。お前はオレのもんだ」

「───・・・ッ」

「次のオレたちが移動する季節、また会おうぜ。

・・・つーか、オレが迎えに行くから」



だから、お前は、



琴座で待ってろ。