その気になればいつでも実力行使で脱獄出来るケンシロウだったが、大人しく捕まったのには理由があった。


(バットに、会えるかも知れない………。)


牢に入れられる、と分かった時に期待した事だったが、どうやら彼のアテは外れたようだった。


ケンシロウに近寄ってくるのは、彼の逞しい体に「違うバット」を固くさせた男たちばかりであり、無論、そんな輩は指先ひとつでダウンさせていた。


だがその度にケンシロウの刑期は重くなっていき、気付けば既に懲役50年を軽く越えている。彼の牢は段々と奥まった場所へと移動させられ、今では罪の重い政治犯や思想犯の近くになっている。




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