踏み切りの前に、たたずむ君の絵を小さなミュージアムでみつけた。
紫陽花の花の色より、
君の黄色い合羽に 見惚れていたのだ。
もう戻れないあの日の情景を 購入し、部屋に飾る事にした。
毎日、絵の中の、君を楽しむようになった私は、半年ぶりになったA子からの、メールをチェックする事も忘れていた。 もう3日前の受信箱にA子の名前を見つけ、返信を迷う夜が続いた。

半年前、クリスマスの夜に、カラオケ屋で 一夜を過ごしたあと、駅までの短い道のり、冷たい雨の中、交わしたあとは、 会っていない。
金の無心に決っている。。結局はそれなのだ。A子の苦しみも充分に聞かされた。泣きながら、長く語る彼女の不幸話には もう飽きたのだ。 話し相手がほしかっただけの頃、彼女の話に興味も関心もないまま、彼女の腕の傷には 触れないまま ただ、言われるままに、援助もしくは 貸与していたのだ。 彼女の人生を背負う気もないまま、ただ、彼女の長く続く不幸話の結末を先送りしてきただけ、そう思えてしょうがない思いを抱えながら、私は彼女との連絡を絶ったのだ。