私がまだ大学生だったとき、友達の未希と終電を逃して新宿駅前で座り込んでいたときのことだった。

「お嬢さんたち、こんなところで座りこんでいたら危ないですよ。」

初めはただのいやらしいオジサマが若い子と遊びたくて声をかけてきたのだと思って無視していた。その後すぐ私たちは近くにいた若者グループにナンパされ、オジサマは自主的に去っていった。

「君たちいくつ〜?僕たちとカラオケ行かな〜い?」

未希が私に耳うちした。

「無視しよ、無視。あっちにいるグループのほうがイケメンだし、声かけられるの待っておこうよ。」

「そうね、なんかこの人キモイし。」

そしてお目当てのグループが私たちに声をかけてきた。

「これから一緒に飲みに行かない?」

「ゴチしてくれるの?」

「いや割り勘で。」

「美鈴どうする?」

「私もうお腹いっぱいで飲めないし・・・」

「だよね。」

そのときさっきのオジサマが少し離れたとこで私たちを見てることに気づいた。私は未希に耳うちした。

「さっきのオジサマならきっとゴチしてくれるよ〜。あそこからまだ私たち見てるんだよね。この人たちは断ってオジサマと話してみない?」

「そうね。若者より安全かもしれないし。」

私たちは若者の誘いを断り、オジサマに手をふってみた。するとオジサマは私たちに近寄ってきた。

「よかった。君たちが変な男どもについて行かなくて。君たちまだ学生だろ?こんなところに女子だけでいるのは危ない。」

「おじさん、何やってる人?」

「僕はこう見えてすごいんだぞ。君たちレベルではなかなか会うことはできない大物だ。」

「え〜嘘っぽーい。」

私たちはオジサマをからかうようにして大笑いした。