その日、私は先に会社を出て、渋谷西武のルイヴィトンで吉田さんにおねだりするサイフを探していた。残業だった吉田さんはデパートが閉まる直前に来て、息切れしたまま休む間もなく私が欲しいと言ったサイフの代金を支払った。普通のサラリーマンが、彼女でもない女に約7万もするサイフをプレゼントするなんてありえない。M男?貢ぎ男?それとも心から反省している証拠?そうだったとしても金銭感覚がおかしい・・・わかっていて買わせた私も罪だけど。

「今日はお酒飲まないから食事してこか?」

「はい。」

気にしているのか、彼はアルコールは一切飲まず、よって話も盛り上がらず食後すぐにバイバイした。

 翌日、会社でマリコにサイフのことを話すと笑われた。

「会社じゃ完全Sなのに、美鈴の前ではMなんだね〜。」

「あたしひどいかな?」

「それくらい当然だよ〜。迷惑被ったんだし。それに噂で聞いたけど、彼女にもブランドのバッグとか買ってあげてるんだって。元々そういう人だから気にしなくていいんだよ。」

「彼女と付き合ったり別れたりしてるんだよね?今別れてるから私にちょっかい出すのかな・・・」

「どうだろうね。でも間違いなく美鈴のこと好きだと思うよ。でも美鈴彼氏いるじゃん。」

そう、私もマナブとはまだ続いていた。数日後、マナブと外食をしたときだった。

「美鈴、そのサイフどうしたの?」

「あ・・・買ってもらった。」

「誰にだよ!?」

ちょっと怒り気味口調で怖かったのでとっさに嘘をついた。

「昔の芸能関係の仕事をしていたときのスポンサーに。たまに食事してるの。」

会社の人とは知られたくなくとっさに嘘をついた。マナブは芸能界がどういうところかも理解していたし、現役時代には私にスポンサーがたくさんいたことも認知していたので、そういう付き合いに口を出さないどころか、スポンサーには欲しいものは買ってもらえばいい、それが美人の特権だ、くらいに思っている人だと知っていたから・・・