オフィスレディの裏の顔

「旅行中に彼女1人にするなんてありえんわ〜。なにケンカしたん?」

「くだらないんですけど、彼が、私がスニーカーで旅行するのダメだって言うからヒール履いてきたんですけど、やっぱり足痛くなっちゃって。なのに食事する場所探すのにいっぱい歩かされてケンカになったの。」

「アホやな〜。旅行なんてスニーカーでええやん。」

色々思いのたけを話してるうちに涙が出てきてしまった。

「行ってやりたいけど、さすがに遠いしな・・・」

吉田さんは彼女もいるのに、なんで私に優しいんだろ?すごく気をつかってくれるし、マナブとは大違いだ。私は少し気づきかけていた。マナブのことはそれほど好きじゃないんじゃないだろうか、と。彼と付き合うきっかけになったのは、元々ナンパされて友達として付き合ってたけど、当時私が同棲してた彼氏と別れてさみしいときに付き合う話になったのだ。ずっと心の支えであったことは確かだけど、最近気持ちがかみ合わないというか、お互いワガママになったのか、はたまた私に浮気心が生じているのか・・・あれこれ考えながら吉田さんと話していると、遠くにこちらに戻ってくるマナブが見えた。

「ごめんなさい。彼が戻ってきたから電話切ってもいいですか?」

「あ〜ごめんな、ジャマして。何かあったら電話してきぃな。」

「吉田さんに?変なの(笑)」

そして電話を切った。結局マナブはどのレストランもいっぱいだったと言って見つけれずに戻ってきた。私は呆れて、さっき一度見かけた近くの高級レストランなら絶対空いてるからと、そこで食事することにした。私は働いてるのに相手が学生だからってビンボー旅行で足まで痛いなんて冗談じゃない。

 そのお店で名物のタンシチューをオーダーしおなかが満たされた後、神戸の夜景をみに山の上の展望台まで車で向かった。旅行雑誌では大きく取り上げられてるわりには、途中の山道は車1台走ってなく街灯もない暗い道で、マナブは男のクセに怖いと言い出した。たまたま後ろからきた走り屋に追い越されると、その車の灯りを頼って一生懸命ついて行こうとして慣れない運転にスピードを出すとこが私は幽霊より怖かった。なんか・・・愛が冷めた。元々あったかどうかもわからないけど。私は夜景を見ながら吉田さんのことを考えた。