相変わらず1日の半分以上は指示待ちで暇なことが多い。私は人間観察をしていた。高野リーダーは必ず中田部長と一緒にどこかへ消えてしまう。最初の業務説明のとき、このチームは部長の秘書業務もあります、と言っていた。でも1日ほとんど席にいなくてどこで仕事をしているんだろう?と疑問に思う。そして私は、私の席の近くドアから出入りをする、ドンドンと足音を立てて歩く男性が気になっていたが、名前がわからなかった。

 その月は私も含めて入退職者が多かったので月末に部門で歓送迎会を開いてくれた。居酒屋へ行くと、個室の入り口に私が気になっていた人が立っていた。

「幹事の吉田です。水沢さんは主役なので真ん中に座って。」

「あ、はい。」

吉田って言うんだ・・・。私は彼に案内されて指定された席に座った。山谷さんも隣りに座ってくれた。部長、課長、送迎されるメンバーの挨拶の後、フリートークタイムとなると男性たちが私の周りの席に寄ってきた。

「水沢さん、うちの会社にはいないタイプっすよね~。」

「こいつ毎日服装チェックしててキモイんだよ~。気をつけてね!」

彼らは勝手に盛り上がっていた。私は遠くから視線を感じ、顔をあげると高野リーダーと目があった。ちやほやされて嫌な感じと思われたんじゃないかと少し恐縮した。でも男性たちはそんなことはお構いなしでだんだんエスカレートしていった。山谷さんが居ずらくなったのか席を立ってどこかに行ってしまうと、私の隣りの席を競ってゲームが始まった。

「若いっていいわね~。」

高野リーダーが嫌みっぽく部長と会話しているのが聞こえた。男性たちが酔っ払って勝手に始めたことをひがまれ仕事がやりずらくなるならこちらこそ大迷惑!だいたい私には全く興味のない人たちなのに!

「水沢さん、2次会も来てくれますよね?」

幹事の吉田さんが話かけてきたけど機嫌の悪い口調で答えた。

「今日は帰ります。」

「みんな水沢さんに来てほしいって。さっきこの辺にいた野郎の1人はファンクラブ作るって言ってるし。あ、キモがらないでね。」

そんな幹事もまた、別の女性の隣りに座ると酔っ払いを介護してる風に抱き寄せたりしてイチャついていた。ここはキャバクラか!私はお開きになったあとこっそり帰った。