「無理に話さなくてもいいよ。」

「そうじゃなくて・・・私のことヒドい女だと思わないでね。」

私は黙って首を縦にふった。

「私、前の奥さんが鶴見さんの家に置いていった物とか全部捨てたのね。お揃いの食器とかも全部捨てて買いなおしたの。」

「やるねぇ〜。」

「だって嫌でしょ?」

「うん、まぁ嫌かも。」

「でもね、先週日曜日に鶴見さんちに行ったとき、見たことない食器があって。」

「鶴見さんが買ったんじゃないの?聞いた?」

「聞けなかった。だって見るからに女の趣味なの。それにお箸とかしまうケースの位置も変わってたし。」

「でも鶴見さんは別れるとき引き取った犬を奥さんにたまに預けるって言ってたしそれで家に入ったりしてるんじゃないの?」

「でももう私と付き合ってるんだよ?そんなのおかしくない?」

マリコは段々息を荒くして怒り口調になってきた。

「それにね、トイレに生理用品が置いてあったの。ちょっと家に寄っただけなら置いてく必要ないでしょ?泊まった証拠じゃない?」

「そうね・・・」

「ムカつくから全部捨てて私のポーチを置いてきたわ。」

「す、すごい女の戦いだね・・・」

マリコは怒りながらも目の奥に涙をためていた。

「で、どうするの?」

「次の日曜日に鶴見さんと会う約束してるの。」

「そっか。」

私はマリコが引いたほうがいいと思っていたけど、心の中に留めておいた。