翌日、午前中はやっぱり放置された。高野さんは相変わらず席にいない。仕事をせずにお給料をもらっていいんだろうか?それとも指導係の山谷さんが、私に辞めてほしくて嫌がらせをしているのだろうか?お昼前に高野さんが席に戻ってきた。

「お疲れ様。水沢さん、どうですか?」

「あ、はい。ルール本はもう読み終わっているので何か業務を・・・」

「山谷さん、どうなってるの?」

すると山谷さんが答えた。

「すみません。忙しくて業務を教えられる状態じゃないんです。」

受け入れ環境も整わないまま人を雇うなんて、なんて経費のムダ遣いなのだろう。恐らく私がそう思っていることに気分を悪くしたのか、高野さんが不機嫌になってしまった。

「水沢さん、本を読んだと言ってますが、どこに何が書いてあるか暗記するくらいじゃないと困りますよ、ルールなんですから。」

怒り口調で言われたので私もびっくりした。こんなことで感情的になるなんて。そのあとすぐお昼時間に入り、私は山谷さんに連れられランチを買いに行った。

「ごめんね、引き継ぎうまくいかなくて。」

「いいえ。私のほうこそ余計な発言してすみません。ランチはみなさんどうしてるのですか?」

「お弁当を買って、部門内の円卓でみんなで食べてるの。よかったら一緒にどうぞ。」

入りたてだし他のチームの子とも仲良くしたいので私は山谷さんについて行くことにした。円卓にはすでに他のチームの子が2人いた。いずれ親友になるマリコとはここで初めて会った。私が初めましての挨拶をすると、私の過去の経歴について色んな質問が飛び交い楽しいランチ時間を過ごしていた。けれど30分くらい遅れて高野さんがお弁当を持って輪に入ってきた。すると空気が一変してみんな喋らなくなった。唯一仕事の話を除いて・・・。さっきまでの楽しい会話はどこに?

 2日目の午後になってやっとパソコンが貸与され業務を教わりはじめた。千野さんの言っていた退職する人って誰なんだろう?忙しいのは山谷さんだけで他の人はみんな暇そうに見えた。