オフィスレディの裏の顔

定時で会社を出たあと、渡辺さんに電話をした。

「お疲れ様です。梨香です。」

「あ〜梨香ちゃん、おつかれ。今日は事務所に来てくれる?そこで相手の人を紹介するから。30分後、大丈夫?」

「わかりました。では一旦失礼します。」
そしてすぐに事務所へ向かった。事務所につくとすぐに相手の人を紹介された。上野さんという方で、年齢は40才前後に見える。頬全体にニキビ跡があって肌が汚いというのが第一印象だ。もし深い仲をお願いされたとしても、大金積まれても指一本触れたくない、それくらい生理的に受け付けない人だ。けれどお茶だけはしなくてはいけないのがここのルール。私は上野さんと一緒に事務所を出た。

「とりあえず食事しましょうか。食べたいものはありますか?」

「おまかせします。」

「では、すぐ近くのフランス料理店を一応予約してたので、そこ行きましょう。」

お店まで歩いて5分もかからないとは言っても、この人と並んで歩くのが辛かった。会社も近いし、会社の人とこの近辺で飲んだこともある。誰かに見られたらどうしようと言う不安から上野さんの後ろをついて行く感じで歩いていた。

お店はコリドー通りに面したビルの1階で、最悪なことに窓際の席だった。窓を挟んですぐ横を人が行き来する。私たちの姿はよく見えるだろう。高いコース料理にワインまで入れて頂いたのに、誰かに見られていないか、そればかりが気になって少しも味わえなかった。

上野さんは話下手のようで会話はほとんどなかった。1つ料理を食べ終えて、次の料理が出されるまでの間は特に困った。ただただ手持ち無沙汰でワインを飲み続け少し酔ってしまった。