オフィスレディの裏の顔

通りまで出てタクシーに乗った。私の家を聞かれたので家近くの通りの名前を伝えた。キムさんは私とは距離をおいて座った。車が走りだしたあとしばらく無言だったので、私は窓にもたれながら外をみていた。これまでこういう状況になると必ず男性側は寄り添ってきたり手を触ったりするのに・・・きっとキムさんにはプライドがあってできないんだろう、そう思っていた。するとキムさんが小さな声で、

「梨香ちゃん、僕たちに次はあるのかな?」

私はよく聞こえなかったので、えっ?と言った感じでキムさんのほうに寄った。すると彼は私の手をとって自分のひざの上においた。

「また会えるかな?条件はゆっくり考えてくれていい。決められたら連絡くれる?」

何の条件なのか、愛人なのか、飲み友達なのかはっきり言ってほしかった。私からも聞けず、話を流してしまった。キムさんは黙って私の手に、小さくたたんだ紙を握らせた。

「今日はありがとう。とりあえず今日の分、少ないかもしれないけど。次回は希望を言ってください。」

それはお札だった。諭吉1人分。お財布を出すのは失礼かと思い、バッグのポケットにしまった。そしてタクシーを降りてキムさんとサヨナラをした。