会社でため込んだストレスのはけ口は、会社外で見つけるしかない。つい、私はあしながおじさんの恵一さんに電話をしてしまった。彼は快く時間を作ってくれた。ヒルトンのロビーで待っていると、まだ仕事が終わらないので部屋まで上がってきてほしいと言われた。私が部屋を訪ねると、ここでもう少し待っててと言って彼は別の部屋に行ってしまった。レジデンスってどんなだろうと思っていたけど、この部屋は普通のホテルの1室。ビジネスホテルみたいな感じだ。私はテレビを見ながら待っていた。

「お待たせ。じゃご飯行こうか。」

「はい!」

「あ、ちょっとまって。」

そう言って恵一さんは机から封筒を出すと私に背を向けてごそごそ何かしていた。

「はい、これ先に渡しておくね。」

いつもの、帰りのタクシー代という名目のお小遣いだった。私は黙って受けとった。でもなぜ今日は最初に渡すんだろ?

「和食でいいかな?」

「はい。」

恵一さんと初めて一諸に食事したお店にした。