結局、終わりくらいになってようやく山谷さんが手伝い始めてくれて、棚卸が終わったのは終電近かった。女の嫌がらせで無駄な残業代がかかっていることをチクってしまいたかったけど大人気ないので我慢した。

 そんな感じで年が明けても相変わらずデスクワークより倉庫での作業が多いので、せっかくきれいにしているネイルアートが台無しにならないように、会社では軍手をすることにした。せっかくなら可愛いものを身につけたいのでピンク色にした。それが目立ってイヤミっぽく見えたのだろうか?高野リーダーから会議室に呼び出された。

「水沢さん、ちょっと座って。」

話ならみんながいる席でしてくれたらいいのに、会議室に2人きり、しかもドアも閉められて圧迫感があった。

「3つ注意があります。」

「はぁ。」

「まず、軍手はやめてください。」

なんで?倉庫仕事に軍手は定番じゃない?これも嫌がらせかと思ったけど、理由を聞いて反論はできなかった。軍手だとパソコンを持ったときすべって落とす可能性があると。でも・・・すべり止めつき軍手ならいいの?

「それから、仕事中はヒールの靴はやめてください。」

理由は軍手と同じだった。パソコンを運ぶのにヒールでは安定しないからと。まあ納得。私は黙って下を向いてはい、と答えた。