オフィスレディの裏の顔

図星だった。恵一さんに心の中を透視されている気分だった。

「美鈴ちゃんの希望は?あ、いや・・僕が希望を叶えられるかわからないけど・・・。もしそーゆーつもりじゃないのなら、これから食事だけ一緒にどうですか?」

私は安全にここから連れ出してくれる人なら誰でもよかった。食事だけなんてありがたいので、外出することにした。

「何が食べたいですか?」

「おまかせします。」

「赤坂はよくわからないので、私の家の方面でもいいですか?もちろん帰りは送りますから。」

そう言ってタクシーを拾い、新宿方面へ向かった。タクシーの中で、恵一さんはお店の予約を入れていた。ついた先はヒルトンだった。恵一さんは私にロビーで待っててほしいと告げ、エレベーターで上がって行ってしまった。宿泊しているのだろうか?地方の人なんだろうか?しばらくすると恵一さんは着替えて戻ってきた。

「ごめんね、では行きましょうか。」

「どちらにですか?」

「ここの3階に、目の前で天婦羅を揚げてくれるおいしいお店があります。天婦羅は大丈夫?」

「大好きです!」

「よかった。では、あちらから上がりましょう。」

恵一さんの素性は聞いてはいけないような気がしたので、着替えたことには特に触れなかった。お店に入ると、キッチンカウンター内にいた店主っぽいシェフが親しげに話しかけてきた。

「いつもありがとうございます。」

私たちはカウンターに座り、シェフのおまかせで料理をオーダーした。お茶を運んできた着物の女性も私にずいぶん気を使っているようだった。

「大事な人をお連れするからとお電話があったかと思ったら、女性だったのですね。」

恵一さんは照れ笑いをした。食事中、私たちは出会いが出会いだけにシェフを目の前に深い会話をすることはなく、ほとんどがシェフを交えた料理の話で、私はただただおいしい!と言っていただくだけだった。その深入りしない感じが逆に私には好印象だった。お会計時、恵一さんは部屋につけておいて、とシェフに伝えた。その言葉を聞いて、ちょっとだけ恐怖心が走った。宿泊客?だとしたらこの後部屋に連れて行かれたらどうしよう?その不安に追い討ちをかけるように、恵一さんはシェフに見えないようにテーブルの下で私に白い封筒を渡してきた。