オフィスレディの裏の顔

「初めてまして。お隣り座ってよろしいですか？」

「はい、どうぞ。・・・。飲み物何か飲まれますか？」

「ではオレンジジュースをいただいてもよろしいですか？」

男性はオーナーを呼んで飲み物をオーダーした。オーナーはにやけた顔で私の方をチラ見した。

「緊張しないで。僕はオーナーの知り合いだし他のお客さんとは違うからリラックスしてくれていいんだよ。」

「はい。」

「実は僕、こーゆーの慣れてなくて。というより指名したのは君が初めてで、どうすればよいのか僕自身わかってなくて・・・」

すごくかわいらしい話し方だった。ギラギラした男の欲みたいなのがなくて、安心して隣りに座ってられる感じだった。

「僕いくつに見えますか？」

「えっと・・・３０代前半くらい？若く見えますけど・・・」

「ありがとう。若く言ってくれてうれしいな。僕の名前は恵一。３８才。よろしくね。・・・よろしくって変かな？」

そう言いながら照れ笑いをした。長くなってしまったが、これが恵一さんとの出会いだった。

「君の名前は？あ、無理に本名言うことはないよ。」

「美鈴です。」

「じゃあ美鈴ちゃん、みすずちゃんは・・・その・・・」

恵一さんは言葉につまっていた。さっき頼んだオレンジジュースがテーブルに運ばれてきたので、私は黙って飲んでいた。

「どうしてこのお店に？」

「友達に連れられてお店の目的もよく知らずに来てしまったんです。」

「でも今日はじめてじゃないよね？」

なんで知ってるんだろう？オーナーに聞いたのだろうか？私の驚いた顔に、恵一さんはすぐに言葉を追いかけた。

「いや、なんか気に障る発言してたらごめんね、２週間前の土曜日美鈴ちゃんをここで見てすごく悲しい顔をしていたから覚えてたんだ。」

「え？」

「お金のために嫌々しているような、そんな風に見えてね、他の女の子とはあきらかに違う雰囲気で、気になってたんだよ。声をかけようと思ったら他の客と外出してしまって。もうここに来て欲しくないと思う一方で、会えないかなと毎日通ってたんだ。」