こうして始まった社内恋愛は、意外にも誰にも気づかれなかった。というのも、周りの人は先入観で私たちが付き合うわけがない、釣り合わないと思っているからだった。マリコと鶴見さんでさえも、私たちが付き合っていることを話すとすごく驚いていた。

よっち(吉田さんの彼女としてこう呼ぶことにした。)は噂で聞いていたとおり、彼女につくすタイプだった。普段会社で威張っていて、亭主関白タイプなのかと思えば、私が口にしないうちからディズニーランドに行く計画を立ててくれていた。正直、男の人に甘えたり、喜びを表現するのが下手な私は、クールな態度で、彼のディズニー計画話を聞いていた。

「やっぱり平日がええんと思うんや。有給とって行かへんか?」

「平日でもクリスマスシーズンは混んでるんじゃないの?」

「いや、でもな、クリスマスのパレード見たことあるか?」

「ううん、ない・・」

「絶対見てほしいねんって!オレは毎回場所取りして前列で見るんやで!」

「えーっ!せっかく行ったら乗り物乗りたいじゃないですか・・・」

「そやけど、じゃ俺場所とっておくから一人で周るか?」

「・・・」

「冗談やって。」

パレードを見ることに命をかけている彼が、子供に見えてかわいいと思った。男のほうがディズニーに行きたがるカップルは珍しいんじゃないだろうか。私たちは有給をとってディズニーランドに行くことにした。

「ヒール履かんで、スニーカーで温かい格好してくるんやで!」

と前日の電話でよっちに言われていたから、私はセータを何枚も重ね着し、靴下も2枚履いて、だるまのようにな姿で迎えにきてくれた彼の前に登場した。

「この格好かわいくない?」

「何着てもかわいいで。いっぱい着こんで暖かくしたか?」

「うん。」

「俺は前の彼氏みたいに靴とかこだわらへんから、楽で暖かい服装してくれたらええねん。」

「それ、覚えててスニーカーいてきて、って言ってくれたの?」

「ああ、そうや。」